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サクラ14

  • posted at:2013-04-13
  • written by:サクラ・エゾヤマ
※レイヤ(656)の日記とリンクしています

*SIDE*???─3年前─


遠くへ


もっと遠くへ


あいつらに見つからないところまで



─遠くへ



その‘少女’は裸足のまま地面を走る。走る。走る。
足に突き刺さる小石の痛みなど、今は‘少女’の障害にはならない。
ひとつの思いが今の原動力であり、その思いは痛覚を無視させる程に強いものだった。

「待て!この奴隷風情が!!」

追ってきた数人の男の一人が‘少女’の腕を掴もうと手を伸ばす。

捕まる。

そう思った時、後ろから悲鳴が次々と聞こえてきた。
振り向くと、赤い髪の‘男’が自分の追っ手を獅子奮迅の一撃でなぎ倒していく姿が月光の下に見えた。


この‘男’は、味方か、敵か。
自分の追っ手を倒してくれたとしても、それは味方という証にはならない。
‘少女’はいつでも逃げられるようにと思うものの、震える足腰はそれを許さず、ただその場に崩れ落ちるだけだった。

追っ手を全て倒すと赤髪の‘男’は‘少女’を見遣る。
‘少女’のズタボロな着衣や白い肌に赤く残る傷の数々を見て一瞬眉を寄せるが、‘男’は出来るだけ優しいトーンで話しかけてきた。

「大丈夫か?…屋敷から逃げ出してきたんだろう?俺は、…王国の騎士で、名前は…って、おい!」

話しかけられた事で恐怖心が一気に溢れ出し‘少女’は反射的に立ち上がりすぐに逃げようとする。
しかし‘男’の手が‘少女’の腕を掴んだ。

「ちょっ、いきなり逃げ出すなよ。今、ここを勝手に動きまわったら危ない…」
「やだ、嫌だ、怖い、来ないで、嫌だ、気持ち悪いのはもう嫌だ、痛いのも嫌だ、嫌だ、来ないで、嫌だ」

‘少女’は肩を震わせながらひたすら拒絶の言葉を絞り出す。
奴隷として囲われていた‘少女’が発する言葉の意味が分からない‘男’では無い。
‘男’は下唇を噛み、‘少女’を思い切り引き寄せしっかりとその腕の中に抱きしめた。
恐怖から暴れる‘少女’を優しく優しく、ひたすら撫で続けていると、‘少女’は諦めか安心か、抵抗をやめていた。

「大丈夫だ、俺は、お前に何もしない。お前が俺に何をしても俺は決して何もしない。俺が必ずお前を守ってやるから。大丈夫だ。だから、もう安心しろ。」
「…本当に?痛いことも、気持ち悪いことも、しない?」

か細い声が、‘男’の腕の中から聞こえる。
少女が警戒を弱めてくれたことに安堵しながら‘男’は微笑んだ。

「ああ、しないさ…と言っても、すぐには信用できないかもな…。そうだ。もし、俺が何かしようとしたらその短剣で刺せば良い。…まあ、するつもりはないけどな。護身用にもなるし、持っといてくれよ。」

‘男’は腰にぶら下げられた短剣を抜き、その柄を‘少女’の手へと乗せる。
バラの彫刻が褒められた刀身を見、‘少女’は困惑の表情を浮かべた。
‘少女’が受け取ったのを確認し‘男’は‘少女’が逃げてきた屋敷を見遣る。
足音や悲鳴で騒がしくなって来た様子に、‘男’は‘少女’を自分の身体から離し‘少女’の瞳を覗き込み騎士団の駐屯所を指差した。

「この先に、俺の仲間が簡易キャンプで待機している。そこまで行って、そのナイフを見せて事情を話せば、保護してくれる。ここに居たら万が一、巻き込まれるかもしれないから。」

不安そうに話を聞いている‘少女’の頭を、ふわりと‘男’の手が撫でる。

「大丈夫、俺の仲間もお前に何かするような奴は居ないさ。居たら、俺がとっちめてやるからさ。」

‘少女’が頷くのを見ると‘男’はその背を軽く押した。

「それじゃあ、また後でな…走れ!」


‘男’に言われるまま、‘少女’は走る。

再び走る。

走る。



 * * *


「もう、大丈夫。ここなら、安全よ?」

辿り着いた駐屯所で‘女騎士’が温かい飲み物を‘少女’ に渡しながら声をかける。
‘少女’は飲み物をくれたその‘女騎士’を見上げ尋ねた。

「ありがとう…お姉さんも、騎士?」
「ええ、そうよ。珍しい?女性の騎士なんて。」
「ええと…」

そもそも物心ついて程なくしてからずっと外界と隔てられ奴隷として生きてきた‘少女’には、それが珍しいか否かの判断は出来ない。
‘少女’が少し困った様に言い淀んでいると‘女騎士’はそれを肯定と受け取り話を続けてきた。

「うちの国は最近復興したばかりで、あまり人手が足りないのもあるんだけど、やっぱり珍しい方かしらね。…後方支援ぐらいなら、私みたいな女性でもできるかなって。それで、騎士になったの。…それに、憧れてる人も居るから、目標はその人だけの騎士になることなの。」

騎士を志した頃からの憧憬を脳裏に浮かべているのか、饒舌気味に‘女騎士’が話す。
そのさなか、俄かに騒がしくなり始めた外の様子に‘女騎士’は少しだけ険しい表情を見せた。

「…何かあったのかしら、ちょっと待っててね。」

‘女騎士’がテントの入口から顔を出し様子を伺う。
外の景色は自分には見えないが、外から聞こえてくる声に‘少女’は身体を固くする。

「…忌々しいあの女…」

「皆殺しに…」



一度は逃れた、人と人の争う声、音。
‘少女’は耳を塞ぎその場に蹲った。
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