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サクラ18

  • posted at:2013-04-13
  • written by:サクラ・エゾヤマ
*SIDE*サクラ

バレンタインデーが、近づく。
去年もあげたけど、今年はレイヤ先生にあげるにあたって、少しだけあたしの心境が違う。

レイヤ先生が食べてくれるチョコレートはどんなものか既に調査済み。
といっても本人から偶然聞いたので調査という程でもない。
今年はウルドが一緒に居てくれるので、チョコ作りに誘ってみた。
二人でこっそりと宿のキッチンを借りてエプロンを付け、チョコ作りを始める。

「ウルド、今日は付き合ってくれてありがとう。」
「ううん!サクラとチョコ作りなんて初めてだから楽しみにしてたんだよ。すっげえ美味しいの作ってレイヤ先生を驚かせようね!」

あたしが作るのは抹茶の生チョコをミルクチョコでつつんだもの。
仕上げに軽く抹茶パウダーを振って完成。
生チョコ自体は作るのが簡単だけど、柔らかく溶けやすい生チョコを違うチョコレートでコーティングするのは少々大変だった。
でもレイヤ先生、あたしからのチョコを受け取ってくれそうだったから…
抹茶チョコなら食べるって教えてくれた時にそう感じたから、全然苦労に感じない。

錬金術の調合の時みたいに精神を集中させて、あたしはレイヤ先生に贈るためのチョコレートを完成させていた。

「ふぅー、出来たぁ。ちゃんと固まってるみたい。ウルドの方はどう?」
「うん、こっちも出来たよ。ウサギの型の耳んとこが細くてチョコが折れないか心配だったけど、厚みがあるから大丈夫そうだね。」

ウルドが作ったものは、ウサギの形をした色とりどりのチョコレート。
ミルク、ビター、マーブル、イチゴ、ホワイトなど、味は様々。
見た目も可愛いし味も色々で、貰ったらとても気分がうきうきしそう。

「ねえ、ウルドは誰にあげるの?」
「ノウァ達だよ。あ、男性にってことなら、小熊さんとかユカラとか…」
「やっぱりウルドは本命チョコはないんだね。」

あたしがそう言うとウルドはきょとんとし、首をかしげる。

「だから恋愛経験ないって前も言ったじゃん。本命あるなら全部一緒で量ができるものになんてしないよ。」
「そうだね…よぉし、あたし頑張る!頑張ってレイヤ先生に渡す!えとね、ラッピングの勉強もしてみたんだよ。」
「おっ、やる気満々だね。確かにラッピングがしょっぼいと台無しだもんね。」
「うん、かわいい系はレイヤ先生には似合わないからシンプルで綺麗めのをと思って包装道具用意したんだ。」

そう言いながら、淡いイエローの不織布と淡いグリーンの不織布を広げる。
そして箱にいれたチョコを袋状に包み、ビニタイでくちをとめて見せた。

「どう?」
「綺麗だし開けやすくていいね。」

ウルドからよさげな返答をもらってホッと胸をなでおろす。
ウルドと宿の人にお礼を言い、包み終わったチョコは部屋の冷蔵庫にしまうことにした。

プレゼントするのは明日…喜んでくれるかな…?

 * * *

レイヤ先生の部屋のドアをノックする。
緊張からなんとなくチョコを後ろ手に隠してドアが開くのを待つ。
ドアが開くと、レイヤ先生が本を片手に立っていた。
読書の最中だったらしい。

「どうした?何か錬金術で分からない事でも出て来たのか?」
「いえ、そうではなくて…その…」

レイヤ先生に促され、ドキドキしながらレイヤ先生の部屋に入れてもらう。
今日は調合はせず読書に没頭していたのか、机の上には綺麗なままの調合器具が並んでいた。

「………。」

その場を沈黙が支配する。
レイヤ先生がおかしく思ってしまわないかと不安になったが、緊張で言葉が出てこない。
レイヤ先生はそんなあたしを不審に思っているのかいないのか、ただあたしをじっと見ている。

「レイヤ先生!」

意を決して、大声で名前を呼ぶ。
レイヤ先生は少し驚いたようだった。

「な、なんだ?急に大きな声を出して。」
「あの、これ!」

後ろに隠していた包みをレイヤ先生へ向けて差し出す。

「きょ…今日は、バレンタイン、なので…っ」
「バレンタイン…?…そういえば、今朝、ユカラにもチョコを貰ったな。そうか、そういう日か。」

こういう行事に関心がつくづく無いのだなと思う。
そしてレイヤ先生の視線があたしの持っている包みに落とされた。
ほんの少しだけ、優しい顔を見せる。

「…去年とはずいぶん大きさが違うな。」
「え、えと…それは…だって……その、お世話になってますから…去年以上に。」

妙な言い訳ばかりがくちをついて出てくる。

「そうか…そういえば、チョコの味も聞かれていた気がするな。抹茶か?」
「はい…あの、レイヤ先生に美味しく召し上がっていただければと思って…。」
「…そうだな、折角だ、有り難く貰ってやろう。」

レイヤ先生から一瞬の躊躇いの様なものを感じたけれど、レイヤ先生があたしの手からチョコレートを奪っていく。
…迷惑だったかな?と一瞬思ったが、レイヤ先生の表情を窺うとやさしげに微笑んでいるので不安は消えていった。

「ありがとうございます…その、糖分ですし、研究や読書で疲れた時にでも召し上がって下さいね。」
「そうだな。確かに、甘いものは助かるな。」

チョコレートを送る理由を少しでも増やしたくてついついそんなことを言ってしまうあたしの頭を、レイヤ先生がぽふっと撫でた。
大きな手の温かい感触に胸がドキンとする。

「あ…、お、お役に立てられれば…幸い、です。」

その後しばらく黙っていたが、はっと気づきあたしは慌てて顔を上げた。

「長居しちゃお邪魔ですね!それじゃ、失礼します。」
「ああ、それじゃあな…。また分からない事があったら聞きに来い。」
「はい!おじゃましました!」

大きくレイヤ先生に向かって頭をさげ、ドアの方へ駆け寄り逃げるように部屋から出る。



…レイヤ先生に伝わることは無いだろう。
このドキドキと、そして弱虫で言い訳ばかりのあたしの後悔は。

でも、受け取ってもらえたことが本当に嬉しくて。




あたしのこの気持ちは恋なのだと。
そう思った。
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