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サクラ22

  • posted at:2013-04-13
  • written by:サクラ・エゾヤマ
*SIDE*サクラ

「卒業試験を、あたしは放棄します。」


灘さんとカムイさんを呼び出し、あたしはハッキリとそう告げた。
二人は顔を見合わせ、そしてあたしを見る。

「…理由くらいは言いなさよ。あんたにとってもこっちにとっても大切な試験なんでしょ?」
「まさか難しくて逃げ出そうって訳とちゃうやろ?」

二人の言葉に、あたしは自分のスカートの裾を握り、俯く。

「……レイヤ先生が…」


あの扉の前で聞いてしまった話。
それを灘さんをカムイさんに、説明する。
レイヤ先生はあまり知られたくない事なのだろう。
けれど、あたしの決意を、灘さんとカムイさんに分かって貰わなければ前へ進むことは出来ない。

あたしが話し終えると、二人はやはり深刻そうな面持ちを見せた。

「…あのレイヤにそんな事情が…」
「だから時々具合悪そうにしてたんやなぁ。…ほんで、サクラはんはどうしたいん?」

カムイさんがこちらを見る。
あたしはその目をしっかりと見返し、答えた。

「あたしはレイヤ先生を治す薬を作ります。あたしはあの人を助けたい。あの人に残された時間は多くない。だから…ごめんなさい!あたしは、あなた達2人を日本へ戻すことよりも、レイヤ先生を助けることを選びます!でも、あたし、国に一度戻って二人のことを引き継いでくれる錬金術師を手配してくれる様に国王に頼んでみますから!」

そう言い終えると、灘さんが困った様に笑った。

「ばかね。そんなに責任感じなくてもいいのよ。ちょっと日本へ戻るのが先延ばしになっただけだもの。私達だって、自分の国に帰る方が人の命より大切なんて思うわけないわ。」
「せやで。レイヤはんが死ぬのをこのまま見過ごすなんて、そんなわけあらへん。俺らかて何や力になれることがあるなら手伝わせて欲しいくらいや。」

カムイさんがいつも通り、にっと笑う。
あたしは二人に何度も頭を下げ、そしてウルドとセツカさんにも話し、すぐにジェイド王国へと向かった。


 * * * * *


ジェイド王国、国王バレット・ジェイド─
彼は国政で忙しく、普通だったら会えるような人ではない。
しかし国王が管理している王立錬金術アカデミーの特別卒業試験生徒であるあたしは割と簡単に謁見を許された。
別の世界で試験に挑んでいる筈のあたしがたったひとりで戻ってきたことを最初は国王も驚いていたが、あたしが事情を話すと彼の表情は憂いを帯びた。

「…そうか……あいつはな…俺の古い友人だ。同じアカデミーで共に学ぶ同期だった。」
「え…でも…」
「ああ、レイヤと俺は年齢差がある。そう言いたいのだろう。今から25年ほど前だ、あいつは忽然と俺の前から姿を消した。そして君の試験の話が出てから、俺達は再会を果たした。」
「…25年…」

レイヤ先生がいくつかは正確には聞いたことがないが、せいぜい20代後半のはずだ。
そのレイヤ先生が25年前、国王と一緒にアカデミーに在籍していた。

「レイヤは18歳の頃、実験の失敗で15年間もの時間を空間ごと凍結していたらしい。」

ある錬金術の実験で失敗し、魔力が暴走。
その時作ろうとしていたアイテムが、時に関係するアイテムだったのが災いして、その実験を行っていた家ごと時間凍結してしまった。
しかも、危険な実験だとわかっていたので人気がまったくない場所で行っていたのも悪かった。
誰にも見つかることが無く、自然解呪するまで完全に放置されていた。

…それがレイヤ先生から国王が聞いた話。

「あいつと会った時に、君のことを最後の弟子と言ってた。最初に聞いたときは、あいつの性格を考えればそうだろうな、と思ったが…あいつは自分の寿命のことを考えていたんだな。」
「………………。あ、あの、国王。それで卒業試験のことなのですが…」
「ああ、わかっている。あの日本人の二人とウルドのことだろう?」

あたしは頷いた。
灘さん達は待ってくれると言った。
ウルドも卒業よりも大切なことだとわかってくれた。
けれど、あたしが一人で決めたことに巻き込んでしまう罪悪感がある。

「君とウルドの卒業に関しては保証しよう。日本人の帰還の研究についてもこちらで引き継ぐ。最も…彼らと話をしてからだな。引き継ぐとなれば彼らがこちらに戻ってくる必要がある。だが君と一緒にレイヤを助けるための決断をしたという話じゃないか。ならば君たちと一緒にいることを望むかもしれない。」
「……。ありがとうございます。本当に、言葉もありません…。」

国王の言葉に、あたしは目尻に涙を溜め頭を下げた。
そんなあたしに国王が近づき、肩に手を添えあたしの顔を覗き込む。

「こちらからもできる限りの支援を約束しよう。あいつを…友を頼む。助けてやってくれ。」
「……はい!」



→レイヤ・センドウ(Eno.656)へ続く
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