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レイヤ15

  • posted at:2013-04-13
  • written by:サクラ・エゾヤマ
※サクラ(655)の日記とリンクしています
※前回からの続きです




*SIDE*ティヒア

走る。

走る。

森の中を少女の手を引いて走る。

惨劇の場から少しでもこの少女を遠ざける為に。


それは、戦闘とすら呼べない一方的なものだった。

男が呼びだした「民」と呼ばれるもの。

それは斬られても、殴られても…首を落とされても一切怯まずに騎士達に襲いかかって来た。
騎士達は傷付き、また一人、また一人と倒れて行った。
錯乱して逃げようとした騎士も居たが、「民」は決してそれを逃すことなく、確実にトドメを刺していった。

そして、騎士団の中でも唯一女性の私に保護した少女を託して逃げるように何人かの騎士が壁になってくれた。

彼らの悲鳴を背に聞きながら、歯を食いしばって走る。
少女も懸命に走ってくれてはいるが、はやり体力に限界があり…
少しづつだが、背後から何かが迫ってくる感覚が強くなってくる。

「は・・・はっ・・・はっ・・・んくっ・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・・ダメ・・・追ってくる!」

一度、背中の方を確認すると何人かの「民」と呼ばれた人影が遠目にだが見える。
このままでは近いうちに追いつかれてしまうだろう。

「・・・このままじゃ追いつかれる・・・覚悟、決めるか・・・」

走り続けていた足を止めると少女も息を切らせながら足を止める。
だが、そんなに時間はない。やつらはもう、そこまで迫ってきている。

「時間が無いから息を整えながら聞いて・・・このままだと、すぐ追いつかれる。だから、私はここで奴らを食いとめるから・・・あなたは少しでも遠くに逃げて。」

少女が苦しそうな表情でこちらを見上げる。
何か言いたいけれど、言葉が出ない…そんな顔で。

「ほら、そんな顔しないの。綺麗な顔が台無しよ?・・・私達は騎士だから。弱きものを護るためにあるの。だから、行って・・・ね?」

ぽんっと少女の背中を押す。
少女は何度か振り返りながらもそれでも走って行ってくれた。
それを確認した後、はぁ…と溜息をつく。

「あーあ、ようやく騎士団に入れてエキュパージュ様だけの騎士をここから目指す!って時なのに、人生ついてないなぁ…。」

ぼやきながら、まだ扱い慣れていない剣を抜く。
元はエキュパージュ様付きのメイドでしかなかった自分。
剣の扱いは、そこまで得意じゃないし、実戦で戦った経験も無い。

それでも、脅威はすぐそこまで迫っていて。

「…ここは通さないわよ!」

すぐそこまで来ていた「民」に剣を振るう。



*SIDE*レイヤ

とある森の中にある小屋。
そこで俺様は、長年の年月をかけた錬金調合を成功させようとしていた。
きっと、もう2度と作ることはできないであろうソレを、俺様は完成させた。

「できたか…これでようやく…」

出来た薬を瓶に移し、副作用で出来た上澄み液をさらに別の瓶へと移す

…作業をしていると、外の方でガタ!っという音がした。

「…何の音だ、今のは。」

動物でも出たのか?と調合の余韻を邪魔された事を不機嫌に思いつつ外を確認しようと扉を開けると…
血まみれの少女が中に倒れ込んできた。
さすがに少しびびったが、なんとか気を取り直す。

「・・・なんだ、この状況は。なるほど、こいつが扉にもたれかかった音か、今のは。ふむ・・・。」

少女は剣か何かで胸を貫かれている。
それだけではなく、何処から落ちたのか手首が曲がっていたり、足も…折れているのではないだろうか。
こんな状態になりながら、明りが見えたであろうこの小屋にまで這ってきたのか…。
そして、少女の命は最早、消えうる寸前に見えた。

俺は、さっき作った薬を思いだす。

「…馬鹿か俺様は。何を考えている。見ず知らずのこんな小娘に…。」

ふと、自分の馬鹿な考えを振り払おうと顔を上げると目の前に【人型の魔法生物】がこちらに近づいてきていた。
もしかすると、この少女を追って来たのかもしれない。

「…まったく、面倒事持ちこんでくれたな。…だが、人様の敷地に土足で上がり込んで来たのだ。」

【人型の魔法生物】がこちらに向けて武器を振りかざそうとした時

手に錬金術の調合とは逆の構成式を魔術で練り上げ【魔法生物】にそれをかざす。

それは、魔法を解除する公式。

それを受け【魔法生物】はそのまま魔力の霧になって飛散した。

「覚悟はできているんだろうな?…と言っても、聞こえんか。」

そこに居た全ての魔法生物を四散させ、再び少女を見下ろす。
その少女の息はもう、止まっていた。


  ◇
  
  ◇
  
  ◇

*SIDE*アラン

「くそーーー!何処いきやがったセツカーー!」

屋敷を制圧して、逃げ出した残党を追いまわしつつ所定の場所へと待機していなかった自騎士団の副隊長を探す。

その合間に、アホ毛の生えた黒髪の少女が残党に攫われかけているのを助けたりとこっちは色々仕事してるってのに!

とりあえず、ある程度残党は片づけたか?と辺りの様子を窺っていると…

「あ、隊長。何処に居たんですか。探しましたよ。」

「それはこっちの台詞だっての!」

いけしゃあしゃあと茂みから副隊長…セツカが現れる。

どうやら、俺が屋敷から出るのと入れ違いで屋敷に戻ってきていたらしい。

「とりあえず、どうします?このあたりは落ち付いたようですが…騎士団の駐屯所に戻りますか?」

セツカの提案にそうだな・・・と頷く。
捕えた人間を運ぶのにもさすがに二人じゃめんどくさい。

とりあえず、駐屯所に戻ることにして二人で話しながら進んでいたが…異変に気づく。
近づくたびに明らかに濃くなる血と死臭の匂い。

セツカと二人で様子を窺いながら駐屯所を目指し、そしてその場所が見える場所まで隠れながら移動して絶句する。


駐屯所に転がる、騎士達の死体の山。

そして、その真ん中に一人の男が立ち、何かを探すように遺体を一人一人確認してる。

その様子を見て、怒りで飛び出そうとするセツカを制する。

「待て…!馬鹿野郎!」

「なっ…!」

何故止める!?というような表情をするセツカを小声で諌める。
俺自身も、怒りで頭がキレそうだが、それでも自分の中の警戒警報が最大に鳴り響いているのを無視はできない。

アレは、ヤバい奴だ。

「もし、あいつ一人でこれをやったってのならかなりやばい奴だ。実際、犯人かはわからねぇが…とりあえず、俺が試しにこいつで仕掛けるからお前は合図で出て来い。」

自分の獲物…グレイプニ―ルを指さしながらセツカに作戦を説明する。
俺もセツカも、物理的な相手にはそうそうひけを取るつもりはないが相手が魔力を使ったりしてくる場合は別だ。
このグレイプニ―ル…槍の先端に付いた鎖には、束縛した相手の魔力を完全に封じる力がある。

とりあえず、先手必勝!とばかりに死体を蹴り転がしていた男に鎖を投げつけ…見事、腕に巻きつける。

「ふん・・・少々油断したか。まだ生き残りが居たとはな。」

「おいおい、てめぇ。人様がいねぇうちに何好き放題やってくれてやがんだ、こら。」

鎖を巻き付けられているにも関わらず、男は余裕の表情を崩さない。

「この場に居なかった貴様は運が良かったと言えよう。だが、この場に現れた貴様は運が悪いなぁ。くくっ・・・お前も同じ運命をたどるのだから。」

男は手をかざし何かをしようとした・・・が、何も起きなかったことで初めて驚愕の表情が走る。

「なに・・・?馬鹿な、魔力が・・・」

「この鎖はグレイプニ―ルってな、俺の切り札でよ。魔力を吸収する力があるんだわ。つまり、巻き付けちまえば魔力で戦う奴を完全に封殺できるってわけよ。・・・まあ、ある島ではまったく役に立たなかったんだが。」

「ふん、こんなもの。外してしまえばすむもの・・・!」

やっぱり魔力を使う系統の奴だったか…俺の勘もまだまだ鈍ってねぇな!と力を込めて相手が鎖を外そうとするのを阻止しつつ。

今か今かと焦れているであろうセツカを呼ぶ。

「今だ!セツカ!やれーーーーーーー!」

「なに!?」

一閃。

俺の後ろから疾風の如き速度で出て来た紅と紫の光が男を切り裂く。

「ぐぁあああああ!ぐぅうう・・・障壁まで無効化されたというのか・・・!」

袈裟斬りにされた男は、鎖に巻き付けられた腕を自分で斬り裂いて空中に浮かびあがる。

「あの野郎、あの傷でまだあんな真似を・・・ってか、なんて外し方しやがる。」

「待て・・・!」

セツカが叫び声をあげると、男はセツカの方を憎々しげに睨みながら声をあげる。

「貴様か・・・!貴様が・・・!そこに・・・そこにあるというのに・・・!」

全てを恨む、呪詛のような声をあげながら男は血を滴らせながらさらに上空へ舞い上がる。

「必ず、必ず手に入れる・・・覚えているが良い・・・!」

そう言って男は空へと消えた。

「くそ、あと1歩だったってのに!…なんだってんだ、ありゃ。あんな魔術師みたいなのが居るとは報告なかったぞ…!」

居たら、とっつぁんか蓮でも連れて来てた所だ。
普通の傭兵しかいないという報告で魔術師を一人も連れて来なかったのが裏目に出たようだ。

すると、セツカが苦々しい声で呟く。

「俺が知りたいですよ…ただ…」

辺りを見渡し、拳を握りしめ、呻くようにさらに呟く。

「また、何も護れなかったってことですよ…。」

そう、騎士団は俺達二人を除いて全滅。
それがこの事件の顛末。



*SIDE*セツカ

そして、保護していた少女も、新兵として新しく入った女騎士も行方不明として処理された。

崖の上に残されていた、短剣の残骸と血だまりの上で…あの時、一緒に行動していれば!と…俺は、後悔に苛まれながら、泣いた。
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